文科省などが主導するグローバル30とはなにか(11, まとめ・結論編)
MEXT's 'Global 30', What is this? (11)
10回にわたって述べてきたことの要点を箇条書きで述べよう。
・大学経営からみれば、基本的に「グローバル30」に採択されることは割に合わない
・留学生30万人計画によって、留学生のうち2-3万人が国内で就職することが見込まれる(現在1万人ほど)
・この数字は、当面の「少子化」問題をある程度打ち消すことができるものだ
・採択された大学は、5年間の補助金支給期間終了後も10年目まで義務を負うが、そのひとつは留学生の数の増大であり、大学によって1,000人-2,300人の増加がノルマである
・これに伴い、多くの大学は、もし従来型定員を縮小させなければ、校舎増設などの大規模投資が必要になる
・一部の職員に英語能力が求められる可能性がある
・グローバル30の「英語コース」で補助金を使って雇用する教員は非常勤に限られる
・今後常勤で採用される教員は、英語による講義とは関係なくとも、英語による教授能力や、1年以上の国外留学経験が求められる可能性がある
・同様に、大学教員を目指す大学院生が留学経験を必要と感じる傾向がよりはっきりする可能性がある
・いわゆるリストラクチャリングのテコとして「グローバル30」が使われる可能性がある
・「グローバル30」は、中教審や教育再生会議などで慎重な検討を経たものというよりは、経済財政諮問会議や一部文部官僚から天下り式に降ってきたものと考えた方がより正確である(*)
・「グローバル30」などにはいくつかの思惑がある(第6回参照)
・「グローバル30」などにはいくつかの混乱が予想される(第7回参照)
・留学生30万人計画や、「グローバル30」で個々の大学に課せられる留学生数増大ノルマは決して達成が易しいものではない。
・学部段階で英語による教授をかなり増やす(目標30%)というのは、単に困難であるだけでなく、不必要・有害である
・その根拠付けとなっている(おそらく)独仏の大学だが、少なくともドイツでは「グローバル30」が想定するようなことは一般的ではない
あまり重要でないように思われるかもしれないが、(*)のことは重要だ。例によって、ここでも民主主義的な何かによって、というよりは、一部の勢力/人間の思惑から決められているのである。
留学生30万人計画では、上に書いたように、留学生のうち2-3万人が国内で就職されることが見込まれる。彼らは定住者となるだろうから(非定住者でも良いが)、今後、毎年それだけの人数の在留外国人がより増えてゆくわけである(もっとも、帰化してゆく場合もあるだろう)。
現在、外国人登録者数は毎年5-8万人増加しており、現在トータルで220万人ほど(2008年)、永住者も毎年5万人ほど増加しており、現在90万人ほどである。(法務省入国管理局統計参照;http://www.immi-moj.go.jp/toukei/index.html)
留学生30万人計画に従えば、10年間で20-30万人の永住者が増えることになる(もっとも、帰国するなど移住する人もいるだろうし、一方では、家族を呼ぶ人もいるだろう)。30年間では(つまり1世代で)100万人に達しようかという人数だ。これは、かなりの数である。
しかし、こうしたことに対して国内の精神的・物理的準備あるいは議論が十分であるとはいえない。例えば、現在、ブラジル人に「帰国キップ」を渡して「帰ってもらって」いる地域でも、彼らを雇う企業は税金は払うものの(払わない企業も多いだろうが)、ツケは自治体とか地域コミュニティーに一方的に押し付けてきたという面は否定できないだろう。もちろん、当の外国人たちにもだ。
そういったことを抜きにして、一種の「少子化対策」としてこうした留学生増加、「国際化」を叫ぶのには、どうもうさんくささを感じざるを得ない。
少なくともいくつかの国で、あまり思慮なしに当面の問題を解決するために外国人を移入してきた結果、深刻な国内問題を発生させてきたという教訓から目をそむけるべきではないだろう。
前にも言ったが、私は外国人排斥論者ではない。これもくどくなるが、数値目標を設けて何人を留学生として確保せよ、そこから何人を企業で雇う、といった手法に違和感を感じているのだ。私はむしろ、日本で学習したい人には日本に来てもらいたいし、あるいは国外で学習したい人には国外に行ってもらいたい。とりわけ、後者は、日本人が過度に内向きになっているように見える現在、やや尻を叩くぐらいでちょうどだ、ぐらいに思わないでもない。
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さて、ここまでは、やや意見を異にする部分があるにせよ、それほど私の記述に違和感を感じなかった人も、以下の記述には反感を持つかもしれない。
私は、日本の人口が多すぎると考えており、なるべくスムーズに(「自然に」)人口を減少させることが必要だと考えている。そうであってみれば、せっかく人口減少のとばぐちにある今、それに人為的に逆らうような政策をわざわざとることにも、強い違和感を感じるのだ。
今後とも日本がある程度の物質的豊かさを享受しようと考えるなら、日本の人口が多すぎることは致命的である。現在、少子化、人口減少「問題」が叫ばれているので、ムードに流されている人も多いと思うが(多いというより、ほとんどの人がそうだと思うが)、1980年代ぐらいまでは日本の人口の多さこそが問題であり、少なさなど全く問題ではなかったのだ。そのころまでは、産児制限が真剣に議論されていたくらいなのである。
留学生の話に即せば、ある人が日本にいるか、別の国にいるか、は世界的に見れば無論意味がないが、とりあえず世界政府といったものが存在しない以上、日本国でできることはすべきである。
日本人の多くも思っているはずだ。世界の人口は増えすぎだということを。しかし日本もまた増えすぎてしまっているのだ。増えたのが過去だったので、現在の状況が増えすぎの結果であるということを忘れているに過ぎない。
現に、(米を食べなくなっているという事情があるにせよ)食料の国内自給率はさんさんたる状況ではないか。これは農業の問題でもあるが、問題の裏側には増えすぎた日本人という理由があるのだ。
もっとも、人口の増えすぎを指摘するのは私だけではない。すでに多くの人が指摘しているところだ。ひとつの参考になる書籍としてアラン・ワイズマンの『人類が消えた世界』(原著2007、邦訳2008、鬼澤忍訳、早川書房)をあげておく。
子供をたくさん作ることこそが後の世代に責任を負うことだ、という考えはもはや見直されなければならない。
上のような根本的な理由から、まさに目先の利益のために人材(人間)を輸入しようという発想にはうさんくささを感じてしょうがないのだ。
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議論の分かれる話は横においておく。
さて、最近買った週刊誌の裏表紙をなにげなく見てみると、ある大学の広告がカラーで載っている。
ちなみに、その週刊誌は、新聞社系で、受験関係の記事がよく載るものだ。(フォントサイズの関係は広告を再現したもの)
平成21年度 文部科学省
国際化拠点整備事業
**大学は 国際化拠点大学
(グローバル30)に選定されました
ああ、やっぱりな、と思わざるを得なかった。「6 思惑編」で書いたが、大学の一部からは、「グローバル30」を単なる(お上のお墨付き)マークか何かのようにとらえ、それを(大学関係者にも、受験生にも何がなんだか良く分からないが)学生獲得の護符にしようという気配が濃厚に感じられていたからだ。
人が悪いと思ったが、念のためにその広告に記載されていた**大学の電話番号に問い合わせたが、そこでは「グローバル30」については不明だとされ、次いで、学内のわかるところ、というところに電話を転送されたが、そこでも必ずしもグローバル30を正確に理解しているとは言いがたい対応だった。まあ、そんなものだろう。
こういった、マークによる誘導、というのは経済産業省などが得意とする手だが、文部科学省もより本格的に使い始めたということだろう。もっとも、すでに、「大学評価基準」とかいったマークはすでにあるわけだが。一部の大学は、それがあれば受験生が集まると思っているのか、「ホームページ」(Webサイトの頭のところという意味で)にナニナニに認定されました、とわざわざのせているぐらいだ。
かつて、日本の企業でISO獲得騒動もあったわけだし(日本からの出願がかなりの部分を占めたと聞く)、大学とはいえ、やはり日本の法人だから、こうしたマークに弱いという点も否めないだろう。それに、マークの意味はよく分からないが、あそこが獲得したのだからウチも、とくる。
以前書いたように、グローバル30は、申請の受付期間が極めて短かった。これだけ大変なオブリゲーションを課されるわけだから、大学経営陣もさぞかし応募するか、しないか懊悩したと推測されるが、ひょっとするともしかして、あまりしなかったかもしれない。
彼らが、単に、補助金と護符がもらえるから、とか、あそこがやりそうなのでウチも、といった安易な理由で応募した・・・ということではないことを期待したい。
了
(シリーズ全部を一気に表示したい場合は、右側の「カテゴリー」の「グローバル30(国際化拠点整備事業)」をクリックすればOK。)
このシリーズ全体の目次(第1回)
シリーズ前の記事;「10, 望ましい国際化方策編」
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