文科省などが主導するグローバル30とは何か(2, 人口編)
MEXT's 'Global 30', What is this? (2)
グローバル30作戦についてのつづきである。今回は人口的観点から見てゆくことにしよう。
前の記事およびこのシリーズ全体の目次;文科省などが主導するグローバル30とは何か(1, 概要、経営編)
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グローバル30は少し脇においておき、グローバル30作戦の根拠となる戦略、「留学生30万人計画」を考えてみよう。これは、福田康夫氏が2008年の年頭の演説で述べたことに由来するとされるが、もちろん、首相オリジナルのものではなく、もともとその考え方はあった。
ルーツをさかのぼることはおいておき、先に進む。
この計画の30万人というのは、2025年ぐらいが目標となっているらしい。そのころの大学の状況はどうなっているのだろうか。ただ、ここでは、2025年ではなく、グローバル30が目途としている2020年を比較対照として取り上げる。
人口を考えるなら、比較的それは簡単で、出生数をみればよい。なんといっても、2020年に大学に入ってくるあたりの世代はすでに生まれているのだ。
今の大学生の生まれた年である1987-1991年に生まれた人は122-137万人ぐらいだ。一方で、2020年に大学に在籍しているであろう1998-2002年に生まれた人は118-122万人。1991年と1998年を比べて意外と減っていないような気がするかもしれないが、実際、大騒ぎしたほど日本の出生数は減っていないのだ(現在は100万人台にはいった)。騒ぎがあったのは、主として、ベビーブーマーの子世代が予想ほど子供を生まなかったということと、1980年代-90年ごろの減少が印象的すぎたということも大きい(1987年から1991年でなんと15万人も減っている)。あと、もちろん当時の厚生省の大騒ぎも原因の一つだ。
それはともかく、平均的に1学年あたり9万人ほど減る計算である(人口統計から計算)。仮に大学への進学率を50%と見積もれば(進学率は傾向的に上昇しているので、もう少し実際には大きいだろう)、1学年あたり約4.5万人の進学者の減少だ。
一方で、現在の留学生の数は約12万人である(日本統計年鑑など)。計画の30万人ということだと、18万人増えればよい。もちろん、留学生は学部にのみ留学するのでは全くないが、ものすごく大雑把に、全員学部として、18万人の1学年ごとの在籍者を計算すると、18/4=4.5万人となる。これは、先の大学進学者の減少をすっかりカバーする人数だ。すばらしい。
ということは、大学業界というものがあったとして(ほとんどないけれども)、「業界」としては悪くない話だ。
しかし、このグローバル30を含む留学関係の話は、単に大学という組織が留学生をより受け入れるというだけの話ではない。より積極的に日本国内で就職してもらい、定住してもらうということが含まれている。
例えば、「『留学生30万人計画』の骨子」取りまとめの考え方(案)」(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/016/gijiroku/08051402/003.htm)には、「平成18年度に卒業(修了)した留学生約32,000人のうちの3割程度の約9,400人が日本国内に就職しているが、この倍増を目指すといった、産学官連携による積極的な留学生への就職支援・雇用の促進を展開することが重要である。」とある。
そうすると、将来的には毎年2-3万人の外国人が新たに日本で就労することも考えられているわけだ。
これは、単に大学といった狭い範囲の話ではなく、かつてから財界が要求していたタイプの「少子化問題解決案」でもあろう。それについてはまた稿を改めるが、必ずしも、「留学生30万人計画」と、「グローバル30」の間でなにも齟齬がないというわけではない。
さて、この作戦はうまく行くのだろうか。
まず、いったい、30万人という数字はどこから出てきたのだろうか。私が先ほどしたような説明も可能だが、公式には次のような説明が行われている。
それは、(案段階だが)先の留学生特別委員会の資料で「『留学生30万人計画』の骨子」に係る検討事項(案)」というものだ。(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/020/gijiroku/08022520/005.htm)
そこでは、次のように説明されている。
*全学生数(300万人)に占める割合を考慮する? → 1割程度?
「キャンパスの10人に1人の学生は留学生」というイメージ
非英語圏の先進国である独(12.3パーセント)、仏(11.9パーセント)とほぼ同じ割合
* 世界の留学生に占める現行のシェア(5パーセント)の維持(アジア・ゲートウェイ構想)
といった内容で、それなりにわかるものの、むしろ、私の説明の方がスッキリくるくらいだ(まあ、そんなことはないだろうが)。
30万人の実現可能性について、一橋大学留学生センターの横田雅弘教授をはじめとするレポートがある。
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~yokotam/Ryuko_whole.pdf
これは、そもそもこの問題を議論してきた中教審「制度・教育部会 留学生ワーキンググループ」の第2回の資料としてあがったものだ。なお、横田氏はワーキンググループのメンバーである。なお、このワーキンググループは後に「留学生特別委員会」となる。
この論文によれば、30万人という数字はかなり厳しいとされている。それでも30万人という目標を掲げるのならどうすればよいか、といった趣の論文だ。
横田氏らがそうだというわけではないが、この話は数字先にありきなのである。
したがって、これらワーキンググループないし特別委員会でも、留学生の定義をどうするかといった、傍から見ればまったくどうでもいい(しかし、当事者にとってはカネの行方に重大な影響を及ぼす)哲学論争が行われたわけである。留学生の定義を広くすれば、目標の達成は容易だ、というわけだ。
ただ、留学生はともかく、大学という「産業」の将来を極めて楽観視している人たちがいることもわかった。教育産業は、成熟産業ではなく、成長産業だというのだ。同じく「留学生特別委員会」第一回の資料で、「教育振興基本計画の在り方について-「大学教育の転換と革新」を可能とするために-」というものである。(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo7/shiryo/08021216/003.pdf)安西祐一郎氏、郷通子氏、金子元久氏、木村孟氏の連名の論文によれば、大学の市場規模は、2007年の296万人から、2025年の375万人に、1.3倍になるのだという。それは、社会人学生が現在の5万人から、75万人になるためだという。私も増えるとは思うが、それにしても、15倍というのはすごい。(ちなみに、この論文では、2025年の留学生の数は25万人である)
小・中学校の教員の「再教育」を2年ごとにでもしますか。それよりも、小中学などに、一部の大学にあるようなサバティカル制度を導入したほうが、よほど健全かつ効果的だと思われるが、どうだろうか。
いずれにせよ、私は実際に30万人になるかどうかよりも、こうした数値目標的な手法を(一部の分野を除いて)好まない。計画経済でもあるまいし、どうしてこのような手法を政府は取るのか、疑問に思う。しかも、次に見るが、このグローバル30と、留学生30万人計画は必ずしも密接に関係しているわけでもないのだ。
つづく。
シリーズつづきの記事;
「3, 数値目標編」
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