« 日本最長の「地方鉄道」に見る税金の誤用-ばかげた補正予算に14兆円など使わず本当に重要なところに使え-
Misuse of the Govermental Budget, Misunderstanding the Society, Lesson from Hisatsu Orange Railway
| トップページ | 文科省などが主導するグローバル30とは何か(2, 人口編)
MEXT's 'Global 30', What is this? (2) »

2009.07.02

文科省などが主導する「グローバル30」とは何か(1. 概要, 経営編)
MEXT's 'Global 30', What is this? (1)

 数回にわたって、当ブログで「グローバル30」というものについて取り上げようと思う。

 「グローバル30」というのは、投資信託・・・ではなくて、政府の「留学生30万人計画」の一環として主に文部科学省(文科省)が行っている、とりわけ英語による大学の「国際化」作戦である。国際化拠点整備事業といった名称もある。

 簡単にまとめておくと、年2-4億円の補助金が5年間出る代わり、大学は、1) 英語での受講で学位をとることができるコースを学部・院双方に設置する、2) 留学生の受け入れ態勢を整える、3) 大学全体の「国際化」をする、4) 「海外拠点」を複数設ける、5) 留学生と外国人教員の数に数理目標を設け、達成しなければならない、となる。

 一部で、この「グローバル30」をワーイといって無邪気に喜んでいる何かも見られるが、実は決してそのようなものではない。以下で見てゆくことにする。
 何回かに分けて書くので、関心のあるところだけご覧いただきたい。

 シリーズ全部を一気に表示したい場合は、右側の「カテゴリー」の「グローバル30(国際化拠点整備事業)」をクリックすればOK。(長文注意)

 目次
第1回「概要, 経営編」(この記事)
第2回「人口編」
第3回「数値目標編」
第4回「教職員・大学院生への影響編」
第5回「起源、経済財政諮問会議編」
第6回「思惑編」
第7回「混乱編」
第8回「留学生30万人計画の現実性編」
第9回「日本の大学学部における英語での授業編」
第10回「望ましい国際化方策編」
第11回「まとめ・結論編」(シリーズ完結、箇条書きによる要約あり)

 作戦自身については、次のところから情報を得ることができるが、実質的には同じである。ただ、後のほうが追加情報がある。

文科省 http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/1260324.htm

日本学術振興会 http://www.jsps.go.jp/j-kokusaika/index.html 

 最初にはっきりいっておけば、経営的に見れば大学がこの構想に乗るのは極めてバカらしいことだ。危険ですらある。

 もう、今日(2009.7.2)には選考結果が結果が明らかになっていると思うが(6月末で選考されるとアナウンスされているため)、応募したのは以下の22大学である。選考されるのは、今年度は12校。(発表は7.3のようだ)

 北海道大学 東北大学 筑波大学 千葉大学 東京大学 東京農工大学
 金沢大学 岐阜大学 名古屋大学 京都大学 大阪大学 神戸大学
 広島大学 山口大学 九州大学(以上国公立、以下私立) 慶應義塾大学
 上智大学 東海大学 明治大学 早稲田大学 同志社大学 立命館大学

 未確認情報だし、しばらくすると明らかになると思うが、**大学と****大学は辞退したとの話もある。(7.3追記、*大は通っているので、少なくとも半分はガセだったようだ・・・しかし、取り下げたけれども、ねじ込まれた?)

 この話はひどく複雑なので数回に分けるが、今回は経営について述べよう。

 まず、事業に対して得られる補助金は2-4億円。事業の最大規模は8億円だとされている。例えば、最大の8億円の事業をある大学が行ったとしたら、大学自体の支出が4億円。国からの補助金が4億円となる。なお、補助金が出るのは5年間で、今年度の予算全体として41億円が予定されている。

 この事業で、次のようなことを行うことが必要とされている。上記サイトの「公募要領」などによる。かなりのヴォリュームがあるが、重要だ、と思う点をあげよう。

1) 英語による授業のみで学位を取得できるコースの設置
    単に大学院だけではなく、学部にも新規に設置しなければならない。
    既存のコースを拡充するだけでは不可。
    とりわけ、外国人教員を国際的公募で求人することが推奨され、日本人の場合には「国際的な教育研究活動実績を有する」人を採用または配置することが推奨される。

これが「目玉」とされているが、一方で、選定された大学は以下のようなその他の義務も負う必要がある。

2) 留学生受入のための環境整備
    留学生のためにいたれりつくせりの環境を整えること。とりわけ;
    大学は「海外拠点」を2つ以上の国に設けなければならない。そこでは、留学の情報提供などを行う。
    また、将来の留学生が国外にいるうちに、入学試験をはじめ、入学手続きまで完了できるようにする。
    国内では、生活のサポート、日本語教育の提供、就職の面倒を見ることといったサービスを提供する。

3) 拠点大学の国際化
    事務職員が「招聘した外国人教員や留学生とのコミュニケーションを図れる程度の能力を有する」ことが必要、といったこと。
    (繰り返しのようだが)「海外において通算して1年以上教育研究に従事した、または国外で学位を取得した日本人教員の雇用の促進」も要求される。

4) 海外における留学生受入のための海外大学共同利用事務所の整備
    先の2)の海外拠点、と関係するが、それを文科省が強制的に「海外大学共同利用事務所」として指定し、大学が設ける施設にもかかわらず、関係ない他のサービスも提供させるもの。
    具体的には、設けなければならない「海外拠点」を(原則、だいたい)、現在日本学生支援機構の事務所のない所に置かねばならない、となっており、これによって、「日本」に関係する「海外拠点」をたくさん増やすということができるという目論見である。
    指定されれば、例えばA大学の海外拠点であっても、B、C、D大学などについても「情報発信」しなければならない。「文部科学省より海外大学共同利用事務所に指定された場合は、当該国において、日本の大学全体の留学生の受け入れの促進につながる支援に努めていただくことになります

5) 達成目標
    特に以下の点について目標を設定すること」とされる。目標年次は約10年後の2020年度。(いつから日本は計画経済の国になったのか?)5年たった後は、もう補助金は出ないが、目標達成は要求される。目標は次のようなもの。
      「全学として留学生比率20%程度を目安として最低でも10%を目指す」
      「現在より 1,000 人以上留学生の受入れ数を増やすとともに、少なくとも 2,600 人以上の留学生の受入れを目指す」
      「全学として外国人教員比率10%程度を目安として最低でも5%を目指す」

6) 国際化拠点の運営体制
      1)-5)の要約に近いが、「体制整備に当たっては、本事業による支援だけでなく、拠点大学が独自に予算措置を行うなど、自主的に経費を措置することにも留意すること」ともある。

 これだけの事業を、2-4億円×5年間でさせようというのだ。

 しかも、5年間の中に中間審査(開始3年目)があったり、終了時に事業評価があったりするのはともかく、「なお、支援期間終了から平成32年度(2020年度)までについても、継続的に実施(達成)状況を把握し、実施(達成)状況の確認を行うこととしています。」(Q&A Q3-19, http://www.jsps.go.jp/j-kokusaika/data/koubo/09_qa.pdf)とある。

 恐ろしいほどのしつこさである。たかだか(?)10-20億円のためにここまでやらされなければならないのだろうか。

 経営的に見れば、一番の問題は次のようなものだ。

 補助金を使って、外国人教員を雇ったり、例の「海外拠点」を設け、その運用を始めたりしたとしよう。しかし、その補助金がなくなった後はどうするつもりなのだろうか。

 私が大学の経営者なら、こういった「補助金ではしごをかける」類の話はよほど慎重に検討するだろう(しかも、5年たった後で、はしごを外されるのはかなりありえる話である)。しかし、大学が検討に使える時間は1ヶ月ほどしかなかったのだ。4月の募集要項発表で5月15,18日が応募締め切りというスケジュールだったからだ。
 そもそも、先に見たように、補助金100%の事業ではなく、大学の持ち出しも最初から想定されている。補助金がなくなった後のことを考えるのは当然だ。しかも、文科省の監視は補助金支給が終わったあとも5年間ついてくるときている。簡単にやめられないだろう。というより、大学といったところは、一旦はじめた事業がなかなか止められない(学生と長期契約しているようなものなので、簡単に「サービス」を打ち切れないのだ)という性格を持っている。
 そこを見越してこのような作戦が立てられたのかもしれない。

 全部で30校らしいから、今回の12校にあえて手を上げる必要はない。手を上げた大学には、ひょっとするともしかして、ややオッチョコチョイの経営陣がいる可能性もある。あるいは、経営を大学コンサルタントに丸投げしているとか。そういえば、リストの中には、資産運用で多額の損を出した学校も含まれているようだ。

 それに、以下の回から見てゆくように、大学が追わなければならない負担はかなり重い。

 この「グローバル30」については、しばらく取り上げ続けるとしよう。

シリーズつづきの記事;
「文科省などが主導する「グローバル30」とは何か(2 人口編)」

|

« 日本最長の「地方鉄道」に見る税金の誤用-ばかげた補正予算に14兆円など使わず本当に重要なところに使え-
Misuse of the Govermental Budget, Misunderstanding the Society, Lesson from Hisatsu Orange Railway
| トップページ | 文科省などが主導するグローバル30とは何か(2, 人口編)
MEXT's 'Global 30', What is this? (2) »

グローバル30(国際化拠点整備事業)」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1143218/30370454

この記事へのトラックバック一覧です: 文科省などが主導する「グローバル30」とは何か(1. 概要, 経営編)
MEXT's 'Global 30', What is this? (1)
:

« 日本最長の「地方鉄道」に見る税金の誤用-ばかげた補正予算に14兆円など使わず本当に重要なところに使え-
Misuse of the Govermental Budget, Misunderstanding the Society, Lesson from Hisatsu Orange Railway
| トップページ | 文科省などが主導するグローバル30とは何か(2, 人口編)
MEXT's 'Global 30', What is this? (2) »