メタボ検診についての厚生労働官僚の驚愕すべき発言
Shocking Officer's Comment on "Metabo"-Compulsory-Test
全く驚くべき発言がこの世にはあるものだ。
「メタボ検診(健診)」に関する厚生労働省の官僚の方の発言である。どこで見聞したかというと、ドイツの公共放送ZDF(ドイツ第二テレビ)のアウスランド・ジャーナル(Auslandsjournal、外国ジャーナル)の2009年4月22日付けの放送である。
ひょっとすると見逃した?ZDFは、NHKのようにできるだけ見せないことをその特質としている「公共放送」ではなくて、ちゃんとした公共放送なので、そこそこの割合で見逃した番組もインターネットで見ることができる。もちろんYouTubeではなく、公式のサイトからだ。
(ちなみに、この記事は、映像を見なくても理解できるようには書いてあります)
http://www.zdf.de/ から、上の中ほどにある「ZDFmediathek」という部分をクリックすると、ZDFのメディアテークの画面が開く。右の方にある「Inhalt」とかかれた検索窓に「japan」と入力して虫眼鏡のアイコンをクリックしよう。
2009.4.22付けの"Schlankheitszwang in Japan"(日本の強制スリム)という番組名が表示されたら、左のチェックボックスにチェックを入れ、下にある右向き三角を押せば番組を見ることができる。もしかすると、転送レートの設定を聞いてくるかもしれない(DSLとかモデムとかのことだ)。その場合、真ん中のラジオボタンにしておいた方が無難だ。(観かたがわからなかったら、コメント欄にお願いします)
はじめは、おそらくドイツ人(レポーター)と思われる方と、全日空の職員の方がスポーツジムでのトレイニングのシーンから始まる。途中、ANAの職員の方とレポーターが実際に「メタボ検診」を受けるシーンもある。問題のシーンは5分経過したあたりだ。
そこでは、まず厚生労働省のはいっている建物が映され、"YOKOYAMA GEN"という人の発言が捉えられ、そのドイツ語翻訳のナレーションがかぶさる。日本語はところどころ聞こえるが、ナレーションの音が大きいために、全体を通しては聞こえない。
ドイツ語から日本語にかなり直訳調に「逆翻訳」すると、こうなる。
日本では、以前から、国や企業がかなり強力に、人々の健康の面倒を見る、ということが慣例になっている。
それゆえ、われわれは、強制検診(ドイツ語でのZwangstest、ドイツ語ではいわゆるメタボ検診のことをこう呼んだ)がプライヴェートな領域への侵犯のように感じられているとは、一度も誰からも聞いていない。
最後のところは、吹き替えが終わっているので、「いう声は、日本では聞かれておりません」とはっきり日本語で聞こえる。やはりおそらく、大概上のようなことが言われたのだろう。少なくとも、二つ目の文については信憑性が高い。すぐに直感するのは、国外のメディアに対してだからといって、このような(あえていえば)デタラメを言うのはいかがなものか、ということだ。
ちなみに、この放送を元にしたとしか考えられない記事がネットにある。ただしドイツ語だ。ここで独訳文を確認できる。
http://www.20min.ch/news/dossier/japanbizarr/story/10650938
・・・というわけで、YOKOYAMA GENさんをそれらしく調べてみると、確かにそれらしい方がいらっしゃり、厚生労働省の厚生労働省保険局総務課医療費適正化対策推進室というところにお勤めだった。誰もが簡単にネットで名前はわかるだろうから、漢字で名前を出しておくと横山玄、という姓名であった。
というわけで、電話でお話をうかがった(前にも書いたけど、先方は忙しいので、丁寧に、質問は構造化して伺いましょう)。およそ、以下のような内容である。
ドイツの放送局の取材を受けたことを明言され、上記のような発言をされたことも明言された。その文脈は、ヨーロッパで同じようなこと(メタボ検診のようなこと)があると、私的領域に踏み込むという反応(もっとありていにいえば反発だろう)が予想されるが、というZDFの質問に対して、上記のような回答をしたものだという。
また、取材時点で彼の知っている情報を元に正確に話したか、という私の問いに、きっぱりと肯定的に答えた。つまり、虚偽を言ったり、事実を曲げて語っていないという言明である。
断っておくが、私は昨今の官僚バッシングをあまり好まない人間である。何かと問題を官僚の天下りと結びつける「官僚陰謀論」「公務員陰謀論」のような話は、ある程度正しい部分もあるだろうが、かなり眉につばをつけて考えている。
しかし、丁寧に回答していただいた横山氏には申しわけないが、やはり上の発言は問題ではないかと思う。
まず、この検診が導入された時点で、「メタボリックシンドローム」の基準や利権の話を別としても、プライバシーの話であるだとか、単に率直に生理的にいやだとか、なんで太っていていけないのかとか、そんなのは個人の自由だろう、とかいった話はかなり出ていたはずだ。それを、担当の官僚が知らないということは考えにくい。元の日本語の聞き取れる部分、「いう声は、日本では聞かれておりません」ということはありえないだろう。
もし、本当に「聞かれておりません」ならば、厚生労働省というところ、あるいはそこに勤める人はよほど偏った情報に接しているということになる。
あるいは、聞いたが、無視して忘れたか、ほとんどそういう声はないと決め込んだか?
ありえる話としては、やはり、外国の放送局だからということで、日本ではこの政策が受け入れられているのだ、ということを担当者としては少々事実を曲げてでも説明、あるいは主張したかったのだろう。日本人が視聴することは想定されていない。もし、日本の放送局がこれをそのまま流したら、かなり視聴者の反発があったのは間違いないだろう。(想像してみてほしい、NHKなどで上の発言が担当官僚のものとしてそのまま流れたとしたらどうなるかを、ま、マスコミは流さないだろうけどね)
しかし、横山氏のこういう反応は、日本人の私からすれば、事実を曲げて国外に伝えていることに他ならないし、もし、横山氏が本当に上のような認識をもっているならば、その認識違いは、職務を考えるならばかなりの問題だ。
この番組のドイツでの典型的な受け止められ方としては、おそらく、とんでもないことが行われているなあ、日本では。(そもそも番組に出てくるおそらくドイツ人だと思われる方は、ドイツの基準でいえば、特に太っているほうではない)しかも、日本人はその政策に文句をいわずに嬉々として従っているように見える、これはいったい?というものだろう。横山氏のインタビュー前までで。(上の、文章サイトも、JAPANBIZARR、つまり、日本の変なもの、という所のものだ、ただ、反日とかいうのとは全く違う)
本当は、ここで、この政策には日本人(の一部)も反対しているのだ、あるいは不満を持っているのだ、と正直に語った方がよかったのである。もし、官庁の掟で正直に語れないなら、それもまた問題だ。どうみても、秘密というほどのものでもない。
そうでなくても、画一的で皆が同じように考え・行動する奇妙な国として有名な日本である(実際、まさにこの弊がインフルエンザ・マスク空騒ぎであらわれ、そして世界にまた報じられてしまったのだが)。正直に言ったほうが、まだ日本にも、こんな奇妙でかつ個人の領域に明らかに踏み込む強制的な政策にきちんと反対する人がいるのだ、と好感を持ってとらえられただろう。(そういう意味では、ZDFのレポーターは、一般の声を聞いてもよかっただろう)
実際にはその逆で、こんなへんてこな政策にも、ひとりの日本人も文句を言わない、少なくとも担当官僚の耳まで届かないほどの日本人しかいないという報道は、ドイツ人にとってはそのステレオタイプをより強固に上書きするものにしかならないのだ。
私自身はこの検診は憲法違反だと評価している。できるだけ早く廃止すべきだ。メタボ検診の廃止は、国会の課題のひとつだろう。
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コメント
メタボ検診の根拠となる疾病患者数のデータは無く、「太っていたら健康に悪いだろう…」という安易な根拠でこの制度は始まったと聞いています。個人個人で健康の特性は違うものですから思いつきで国が強制して国民個人個人を管理するというのは民主主義国家として度を越しています。官僚の思い上がりもココまで来ると共産主義・社会主義をも超えた独裁国家・強権国家に匹敵すると思います。
投稿: y | 2009.06.05 17:46
v様、コメントを頂戴いたしまして誠にありがとうございます。
v様と似たような指摘は、記事中の文書サイトにもあります。やはり、かなり奇妙に見えるらしいようです。
国というのが国民に対し指示できることは基本的に、「何々をするならこのようにせよ」「何々をしたらこのような罰を受ける」「何々はしてはならない」のはず。
「何々をせよ」というのは、憲法で規定しない限りできないはずなのです。最近、こうした立法や新規制度が多く、困ったなあ、という感じです。
なんとかしたいものです。
投稿: ほよっ | 2009.06.05 18:21