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2009.01.07

NHKのツナミ電波ジャック
NHKの災害関連報道は誇張?
Tiny Tsunami Hijacks Nippon Hoso Kyokai

 あけましておめでとうございます。今日は、最初はくだけた文体で行こう。

 年末年始、かぜかなにかでダウンしていたこともあったわけですが、別の主たる事情で、日本のマスメディアに接したのは3ヶ日明けの4日正午ごろ。ま、4日早朝に議論を呼ぶ『キングダム』という映画と、よくできているとは到底言いがたい『ゾディアック』をテレビで見てはいるが、まあそれは「マスコミ」ではないからね。ちなみに『キングダム』については、また書くこともあるかもしれない。

 さてさて、正月明けそうそう、驚かされたのが公共放送=NHK。
 なにやら、ニューギニアで地震が発生したとかで、津波のとどいた状況と、例によって警戒の呼びかけをしている。それによると、「かなりあとになって、より高い津波が来る可能性がある」とのこと。くわばらくわばら・・・

 ・・・と、思った人がどれぐらいいるかわからない。潮位にもよるけど、数十センチレベルの津波では、ほとんどの人が影響がないだろう(こういうと、津波の恐ろしさは高さじゃないんだ、と力説する人が現れる。それもそうだけど、そうなら、違う尺度で説明する努力をしないといつまでたっても、なにか訳のわからないものに怯えることになるだけだ)。
 日本人の大多数は、海面レベルよりずっと高いところにいたんじゃないかな。かくいう私は集合住宅の少なくとも2階以上にいた。

 それで、なにが放映されていたかというと、気象庁のだれかがでてきて、これまでのニューギニアあたりでの地震の歴史をずっと語ってくれているようなもの。その方には申し訳ないが、直接、即座に役に立つ話ではなかった。かぜと疲労で頭がまわっていたとはおせじにも言いがたいので、このような要約は正確ではないかもしれない。

 それがずーーーーっと流れる。のど自慢もあるけど。

 この手のNHKの番組でまず疑問に思うところは、このような番組が果たして必要かどうかだ。

 そういうと、必ず否定的反応を受ける。というのは、いまや、公共放送=NHKに期待するところのもっとも大きなものが「災害(防止)放送」であると、国民もNHKもまさに「自他共に」認めているらしいからである。そうであれば、どんな災害であっても、大々的に報道しなければならない!

 そうだろうか?やはり、物事には合理性が必要だろう。考えられる被害の程度に応じた報道のあり方ということを考えてもよいのではないか(こういうと、必ずいわれるのが、「でも、なにかあったらどうする」というもの。日本人がこの幼稚な思考から脱するのは私はほとんど不可能なことのように絶望視している)。別に報道するなと言っているのではない。画面の一部で情報を流すとか、津波警報が出ていることを示すサインを部分的に出すなどの方策もあったはずだ。
 また、本当に公共放送に求めるものが、災害(防止)報道だけなのだろうか。もし、そうなら、災害がなければ、公共放送はいらないことになる。まあ、関東大震災がラジオ放送の背を押したという設立時の事情はあるけどね。

 統計学の考え方に、2つの種類のエラーというものがある。これは、本当はAではないというときにAだといってしまうというものと、本当はAであるときにAではないといってしまうというものだ。

 この手の報道は、この考え方で割り切ると、ある意味わかりやすいだろう。

 被害が起きるほどの津波があるだろうときに、そのような津波はないと判断する失敗。
 被害が起きるほどの津波はないときに、そのような津波があると判断する失敗。

 およそ、最初の失敗は最小限に抑えたいと考えるだろう。しかし、一般に、最初の失敗を押さえようとすればするほど、後の失敗の可能性は大きくなるのだ。

 ちょっと考えれば、最初の失敗を犯すことによる「費用」が目に付く(例えば建築物が破壊されるとか)。しかしながら、後のほうの費用もかなり大きいことを我々はしばしば看過しがちだ。それは、単に、その放送が流れていなければ、正常なプログラムが流れていたに違いない、といった問題にとどまらない。
 NHKは、「十分な警戒」を呼びかけているのである。多くの人が精神的な緊張を強いられるし、場合によっては、なんらかの予定を変更したり、あるいは全て控えたりすることもあるだろう。その「費用」は、少し考えてみればわかるが、かなり大きい。

 NHKは、気象庁のいっていることをそのまま流しているだけだ、という、マスコミ一流の言い訳をしたがるかもしれない。しかし、それは通用しないことを考えるべきだ。ここに被害の予想が強い順にA、B、Cの事象(予測)があったとしよう。これが、人々が忘れるころに放映される。そして、その放映時間は同じだったとする。もし、被害の予想に応じて放映時間の長短があったり、取り扱いにおいて軽重の差があったりすれば別(特に、映像資料などの差があれば別)だが、もし、同じであれば、視聴者が受ける深刻さの印象と、被害予想そのものの強度はさほど関係がないはずだ。これは、マスコミ研究から得られている知見である。つまり、NHKは、きちんと自分で物事の重みを考えるべきなのだ。

 ということは、最悪の場合あってもたいした被害が予想されないのであれば、津波の第1波が届いたあとは、NHKはさほど大々的に取り上げる必要はなかったのである。 むしろ、どのように安全か、あるいはいかにして安全をより確実にするかを報道したほうがよかったろう。しかし、そこでも障害になるのが、日本人が根強く持つ、「何かあったら」という発想である。とにかく、これをなんとかしてくれ。不思議なことに、「自己責任という言葉を嫌うのはサヨク」(≒私はサヨクではないので自己責任という言葉が大好きだ)とかいった思考から抜けきれない者でも、「万が一」とか「何かあったらどうするのか」「(まだ存在すらしていない)被害者の立場にたって考えろ」という発想をする(不思議なことに、彼らはまた、確率-リスク-ダメージという考え方がわかっていないので、原子力については、その考えをとらない)。

 NHKは、その反対に、これから高い波が来る「可能性」があると、むしろ警戒感をあおる放送をしていたのである。いろいろなところからの反射波がたまたまひとつになり、津波の高さが高くなるだろうという指摘もあった(少し考えればわかるが、そもそも、その状況はかなり局限されるし、仮にその場合であっても、高さはあっても、破壊力はあまりない)。

 NHKに依頼したいことは、このような災害(防止)特別番組を行うのであれば、必ず後に検証番組を放映してもらいたいということである。「最大**センチの津波が予想されます」とするのであれば、その予想が当たったのか、はずれたのか。そもそも、そのような津波が平均的に予想されていたのか、それとも、平均プラス(いくつか、1とか2とか)標準偏差で予想されていたのかを知らせるべきだ。

 そうでなければ、NHK=公共放送=「オオカミ少年」ということにもなりかねない。というか、もはや、かなりの部分、そうなってしまっているのではないだろうか。

 もし、「今後最大(のところ、という意味だろう)で50センチの津波が予想されます」、などといっておいて、実際にはせいぜい40センチの津波しか来なかった場合、予想が外れたわけで、予測とはいえ基本的には誤報である。予測なら外れてもよい(何を言ってもよい)、というのなら、最大で2mとか3mとかいってもよいことになる。

 では、実際にどうだったのだろうか。検証してみよう。

 NHKのサイトから;ニュース「太平洋沿岸などに津波注意報」関連
 http://www3.nhk.or.jp/hensei/program/k/20090104/001/11-1016.html

  津波到達予想時刻と予想される高さ
    小笠原諸島 すでに到達と推測 予想50センチ
    愛知県外海 前10:30頃  予想50センチ
    相模湾・三浦半島
          後0:00頃   予想50センチ

 放送と同じとは思わないが、本稿執筆時にまだ残っている情報である。
 次に、気象庁。1/4付けの報道発表資料である。

  http://www.jma.go.jp/jma/press/0901/04a/kaisetsu01041130.html
  ○ 津波の観測状況(10時59分現在)

  父島二見    09時55分    0.4m
  和歌山県串本町袋港    10時17分    0.3m
  奄美市小湊    09時38分    0.3m
  室戸市室戸岬    10時52分    0.2m
  など

 これは、NHKが報道の基礎としたものとほぼ同じだろう。その後のことは、気象庁のサイトからではわからないので、直接、気象庁に問い合わせたところ、今回の地震による最大の津波観測は、上の父島二見の0.4mと同じ0.4mとしてもうひとつ、和歌山県串本町袋港で12時14分に観測されているという。ただし、これらは、実際には、そのうちにセンチ単位で正確に計りなおされるので、そのときには38センチとか、36センチであるかもしれないとのこと。つまり、あえて単純化していえば四捨五入されているのだ。
 なお、メートルとセンチの違いの点も重要だ。気象庁は0.4メートルなどとしかいっていない。何センチとはいっていないのにもかかわらず、NHKはなんとかセンチと言い換えているのである。仮に、40センチ、といわれたら、40センチあるものだと思ってしまうだろう。そのときに、35センチから45センチの間である(気象庁はそれもいっていないが、正確には当初段階ではメートル単位で下1桁までしか測っていない、というのが正しい理解だろう)とは思わない可能性がある。

 ちなみに、こういうことをネットで書くと、「ウソつけ!てめえに気象庁の知り合いがいるわけないだろ」などと、見当違いの突っ込みをしてくるものがいる。確かに、いないが、聞けばよいだけだ。気象庁のサイトに代表電話番号が書いてあるので、そこから担当の人に聞くだけである(上の0.なんとかメートルという表現も、サイト同様、気象庁の方も使っているのだ)。もちろん、答えてくれそうな質問しかしないけれど(国家の秘密らしいこととかはハナから聴かない)、今まで、国や県の職員の方が答えてくれなかったことはあまりない。いうまでもなく、当方で十分調べて、質問を構造化してからしか聞かないのは当然だ。

 話を戻すと、結局、0.5mの津波はその後もなかった。NHKの警戒の呼びかけは空振りに終わったのである。

 もちろん、私はそれをすることがよくないといっているのではない。問題なのは、それが、あまりにもNHKの放送をジャックし続けたことにあるのだ。確かに、これが1mを超えるクラスの津波が予想されるなら、あってもよいかもしれない。しかし、そうではないし、その時点でも、さほど被害は予想されなかったはずだ。ちなみに、海上はどうなのか、という別の突っ込みもありえるが、その質問は、もっと津波について学習してからするべきだ。

 私が望む公共放送の姿というものは別にある。今とはかなり異なる。それなら、もっとこうした災害(防止)放送がスマートに行われるだろう。しかし、NHKの現状では、国民を不要に疲労させ、払った受信料分の放送を行わないことにしかなっていないのだ。そして、その、災害時に大騒ぎするNHKのイメージが、さらに日本国民にNHKに災害放送を望む(あるいは、しか望まない)という、悪循環を招いているのである。

 これでは、真に重要なときの災害放送にすら問題をもたらすだろう。

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